IT化・デジタル化が裁判所への資料提出を難しくする場面について
2026/03/15
こんにちは、弁護士の森田です。
近年、各種手続のIT化・デジタル化が進んでいます。
利便性の向上という点では歓迎すべき流れですが、弁護士として裁判実務に携わっていると、「裁判所への資料の提出」という場面においては、かえって手間が増えてしまっていると感じることがあります。
裁判所に提出する証拠は、現在は原則として「紙」で提出することが前提となっています(今年の5月からは民事裁判手続きのデジタル化によって、証拠はPDFデータで提出することになりますが、状況は変わりません)。
データとしては簡単に確認できるはずのものが、証拠や疎明資料として提出しようとすると、思わぬハードルになることがあります。
以下、思いつく具体例をいくつか挙げてみます。
①母子手帳・保育園の連絡帳がアプリの場合
子の監護者指定審判や親権に争いがある離婚裁判では、これまでの監護養育状況を示す資料として、母子手帳や保育園の連絡帳を証拠として提出することがあります。
紙の手帳であれば、必要なページをコピーすれば足ります。
一方、母子手帳アプリや保育園アプリを利用している場合、
どの画面を証拠として提出すべきか
スクリーンショットで足りるのか
自宅やコンビニで印刷できる環境があるか
といった点を検討する必要があり、依頼者の方に印刷手段がない場合には、余計な手間がかかります。
②自己破産における通帳の提出
自己破産の申立てでは、通常、過去2年分の預貯金通帳の写しを提出する必要があります。
紙の通帳があれば、該当箇所をコピーするだけで足ります。
しかし、最近は紙の通帳を利用せず、銀行アプリだけで取引履歴を管理している方も増えています。
この場合、
アプリでどこまでの取引履歴を確認できるのか
PDF等でダウンロードできるか
自宅やコンビニで印刷できる環境があるか
といった点を確認する必要があり、依頼者の方にとっても、弁護士にとっても負担が増えてしまいます。
金融機関で利用明細を発行してもらうこともできますが、手数料が必要になることもあります。
③車検証の電子化
自己破産や離婚に伴う財産分与、遺産分割の場面では、自動車の存在や所有関係を示すために車検証の提出が必要になります。
従来であれば、車検証をコピーすれば済みました。
しかし、車検証の電子化により、ICチップを専用アプリで読み取らなければ詳細な情報を確認できない仕組みになっています。
当面は「自動車検査証記録事項」が発行されるため大きな支障はありませんが、アプリのインストールや読み取り作業が必要になる点で、以前より確実に手間が増えます。
おわりに
IT化・デジタル化は社会全体として避けられない流れであり、多くのメリットがあります。しかし、裁判実務の現場では、まだ「紙」を前提とした運用が色濃く残っているのも事実です。
今後、裁判所の運用も変わっていくと思われますが、現時点では「デジタルの方が必ずしも楽とは限らない」という場面があることも、知っておいていただければと思います。
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