離婚するとき、預貯金はどう分ける?財産分与の基本を弁護士が解説
2026/10/15
こんにちは、弁護士の森田です。
離婚を考えるとき、「夫婦で貯めてきた預貯金は、離婚するとどうなるのだろう?」と疑問に思いますよね。
預貯金は、夫婦のどちらか一方の名義になっているため、「自分名義の預金は自分のものだから分けなくてもいいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、財産分与の対象は、預金の名義だけで判断されるわけではありません。
今回は、離婚の際に預貯金がどのように扱われるのか、基本的な考え方を解説します。
1 離婚すると預貯金はどうなる?
離婚に伴う財産分与では、原則として、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産(共有財産)を分けることになります。
預貯金についても、婚姻中に夫婦の収入から形成された預貯金であれば、夫婦のどちらの名義になっているかにかかわらず、原則として財産分与の対象となります。
例えば、夫が会社員として働き、妻が専業主婦だったとしても、夫の給料から婚姻中に貯めた預金について、「夫名義だから全部夫のもの」ということにはなりません。
妻が家事や育児を担うことで夫の仕事を支えていたと考えられるためです。
そのため、「その預金がいつ、どのように形成されたのか」が重要になります。
2 結婚前から持っていた預金はどうなる?
一方で、すべての預貯金が財産分与の対象になるわけではありません。
例えば、夫が結婚する前から100万円の預金を持っていて、その100万円が離婚時まで残っている場合、この100万円は原則として夫婦の共有財産ではなく、夫の特有財産として扱われます。
結婚前から持っていた預金
相続によって取得した預金
親から贈与されたお金
などは、原則として特有財産であり、財産分与の対象とはなりません。
もっとも、結婚前から持っていた預金と婚姻中の収入を同じ口座で管理して、預金が増減しているような場合には、必ずしも特有財産とはいえず、問題が複雑になります。
3 自分名義の預金なら分けなくてもいい?
これはよくある誤解です。
例えば、妻名義の銀行口座に婚姻中の給与を貯めていて、離婚時に500万円の預金があったとします。
この500万円について、「妻名義の口座だから妻のもの」と単純に判断することはできません。
婚姻中に夫婦の協力によって形成された預金であれば、財産分与の対象となります。
預金の名義と、財産分与の対象になるかどうかは別の問題です。
4 子ども名義の預金は?
子ども名義の預金についても注意が必要です。
例えば、子どもの将来のために夫婦が毎月少しずつお金を積み立てていて、子ども名義の口座に200万円あるというようなケースです。
誰のお金を原資としているのか
誰が管理しているのか
夫婦の財産として単に子ども名義の口座を利用しているだけなのか
子どもへの贈与として預金したものなのか
などの事情を考慮して判断する必要があります。
「子ども名義だから夫婦の財産ではない」「子どものためのお金だから財産分与の対象ではない」というように、名義だけで決まるわけではありません。
5 相手の預金がいくらあるかわからない場合は?
離婚の相談では、「夫が通帳を全部管理していて、預金がいくらあるのかわからない」「妻が自分の口座を見せてくれない」というケースもあります。
財産分与を考えるうえでは、夫婦それぞれがどのような財産をいくら持っているのかを確認することが重要です。
相手の財産についても、通帳のコピーや残高がわかる資料などがあれば保管しておくことが大切です。
相手が財産を開示しない場合には、離婚調停や訴訟の中で財産についての資料の提出を求めるいくつかの方法がありますが、期待するような結果を得られるとは限りません。
6 離婚時の預貯金は「半分ずつ」が基本?
財産分与では、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産について、原則として2分の1ずつ分けるという考え方が基本となります。
例えば、財産分与の対象となる預貯金が夫500万円、妻300万円だったとします。
夫婦共有財産の合計が800万円であれば、原則として一人400万円ずつになるように調整することになります。
この場合、すでに夫が500万円、妻が300万円を保有しているため、夫から妻に100万円を渡すことで、それぞれ400万円ずつになります。
ただし、実際の財産分与では、預貯金だけを見て決めるとは限りません。
不動産、生命保険、株式、退職金、車、住宅ローンなど、他の財産や負債も含めて全体を整理する必要があります。
7 離婚前に預金を勝手に使ったらどうなる?
離婚の話が出ると、「相手に財産を取られたくない」「離婚するなら自分のお金を先に使ってしまおう」と考える方もいるかもしれません。
しかし、財産分与の対象となる預金について多額を浪費してしまったり、他の親族の口座に移したりすることは、のちのトラブルにつながる恐れがあります。
このような場合、使途について合理的な説明をできないと、その預金は「ある」ものとして扱われることになります。
8 「いつの時点」の預金が財産分与の対象になるのか?
預貯金については、「どの時点の残高を基準にするのか」という問題もあります。
例えば、別居してから離婚までに数年かかった場合、別居後にそれぞれが働いて得た収入まで夫婦共有財産として扱うのか、という問題が生じます。
一般的には、夫婦の財産形成に対する協力関係がなくなった時点として、別居時を基準として考えることが多いですが、具体的な事情によって異なります。
離婚を考えている場合には、別居する前後の預金残高や財産状況がわかる資料を残しておくことが重要です。
9 預貯金の財産分与で大切なのは「名義」より「形成過程」
離婚時の預貯金については、「この口座は自分名義だから自分のもの」「相手名義だから自分には関係ない」と単純に考えることはできません。
重要なのは、その預金が、いつ、どのようなお金を原資として形成されたものなのかという点です。
また、実際の財産分与では、預貯金だけでなく、不動産や保険、株式、退職金、住宅ローンなどを含めて夫婦の財産全体を確認する必要があります。
「自分の場合、どこまでが財産分与の対象になるのかわからない」という場合には、まず現在の財産状況を整理したうえで、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
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