相続放棄をした方がよいケースとは?弁護士が分かりやすく解説
2026/07/01
こんにちは、弁護士の森田です。
相続が発生すると、亡くなった方(被相続人)の財産は相続人に引き継がれます。しかし、相続の対象となるのは預貯金や不動産などのプラスの財産だけではありません。借金や未払い金などの負債も相続の対象となります。
そのため、「相続したら借金まで背負うことになってしまった」というケースも少なくありません。
このような場合に検討すべき制度が「相続放棄」です。
今回は、相続放棄をした方がよい代表的なケースや注意点について解説します。
1 相続放棄とは
相続放棄とは、相続人が相続財産を一切引き継がない制度です。
相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったものとみなされるため、プラスの財産も負債も一切引き継ぎません。
ただし、相続放棄は家庭裁判所で正式な手続を行う必要があります。
単に「私は相続しません」と親族に伝えるだけでは相続放棄にはなりません。
2 相続放棄をした方がよいケース
①借金が財産よりも多い場合
最も典型的なケースです。
例えば、
預金:100万円
消費者金融からの借金:300万円
という場合、相続すると差し引き200万円の借金を負うことになります。
このような場合には、相続放棄を検討すべきでしょう。
②保証人になっていた可能性がある場合
被相続人が他人の借金の保証人になっていた場合、その保証債務も相続の対象となります。
保証債務は表面化していないことも多く、相続後に突然請求を受けるケースもあります。
事業を営んでいた方や会社経営者が亡くなった場合には、特に注意が必要です。
③財産状況が不明で多額の負債が疑われる場合
被相続人と長年疎遠だった場合など、財産状況がよく分からないことがあります。
例えば、
借金をしていたという話を聞いたことがある
督促状が届いている
事業の経営状態が悪かった
といった事情がある場合には、安易に相続手続を進めず、相続放棄を含めて検討することが重要です。
④相続争いに巻き込まれたくない場合
相続人同士の関係が悪く、遺産分割協議が長期化することもあります。
相続財産に大きな価値がなく、争いに関わるメリットが少ない場合には、相続放棄によってトラブルから距離を置くという選択も考えられます。
もっとも、相続放棄をするとプラスの財産も取得できなくなるため、慎重な判断が必要です。
⑤空き家や管理困難な不動産だけが残されている場合
近年増えているのが、地方の空き家や利用価値の低い土地を相続するケースです。
不動産を相続すると、
固定資産税の負担
建物管理の負担
解体費用の負担
などが発生する可能性があります。
不動産の価値よりも維持費や管理負担の方が大きい場合には、相続放棄を検討する余地があります。
3 相続放棄には期限がある
①熟慮期間は原則として3か月
相続放棄はいつまでもできるわけではありません。
原則として、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所へ申述しなければなりません。
この期間を「熟慮期間」といいます。
期限を過ぎると原則として相続放棄が認められませんので、早めの対応が重要です。
ただし、被相続人と疎遠で、借金があることを全く知らず、請求書が届いて初めて借金があることを知ったような場合、最高裁の判例に基づき、「借金の存在を知った時」を相続放棄の熟慮期間の起算点と主張する余地があります。
3か月が過ぎてしまったからもう相続放棄ができない、と決めつけずに、このような場合には速やかに弁護士に相談することをお薦めします。
②熟慮期間の伸長
相続財産の内容が複雑であったり、財産調査に時間を要したりする場合には、家庭裁判所に対して熟慮期間の伸長(延長)を申し立てることができます。
例えば、次のようなケースでは熟慮期間の延長をした方が良いかもしれません。
被相続人が事業を営んでおり、財産や負債の把握に時間がかかる場合
被相続人と長年疎遠で、財産状況が全く分からない場合
不動産や未公開株式など、調査に時間を要する財産が存在する場合
借金の有無について調査を進めている途中である場合
熟慮期間の伸長は自動的に認められるものではありません。延長が必要と思われる場合には早めに申立てを行うことが重要です。
4 相続財産を処分すると相続放棄できなくなることも
相続放棄を検討している場合には、相続財産を勝手に処分しないよう注意が必要です。
例えば、
預金をおろして自分の生活費や遊興費として使う
被相続人の借金を被相続人の預金から返済する
といった行為をすると、「相続を承認した」(単純承認)とみなされて、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。
5 相続放棄を検討している方は早めに弁護士へ相談を
相続放棄は借金がある場合などに有効な制度ですが、一度受理されると原則として撤回できません。
また、財産調査が不十分なまま判断すると、損をしてしまう可能性があります。
被相続人に借金があるかもしれない、財産状況がよく分からない、相続放棄すべきか迷っているという場合には、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
6 まとめ
相続放棄を検討すべき代表的なケースとして、
借金が財産より多い場合
保証債務がある可能性がある場合
財産状況が不明な場合
相続トラブルを避けたい場合
管理困難な不動産のみを相続する場合
などが挙げられます。
相続放棄には3か月という期限があり、一度手続を行うと原則として撤回できません。
相続放棄をすべきか迷った場合には、早めに専門家へ相談し、ご自身にとって最適な選択を検討することが大切です。
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