財産分与の「対象財産の判断基準時」と「価値評価の基準時」
2026/08/01
こんにちは、弁護士の森田です。
離婚時の財産分与では、「いつの時点の財産が対象になるのか」と「その財産の価値をいつの時点を基準として評価するのか」が問題になります。
一見すると同じような話に思えますが、この二つは異なる問題であり、実務上も区別して考えられています。
1 対象財産を判断する基準時は「別居時」が原則
財産分与の対象となるのは、夫婦が協力して築いた共有財産です。
では、どの時点だと共有財産といえるのでしょうか。
実務では、夫婦の共同生活が実質的に終了した時点、すなわち別居時が基準になるのが原則です。
例えば、
別居時に所有していた自宅
別居時の預貯金
別居時に保有していた株式
などは、原則として財産分与の対象になります(ただし、取得した際のお金の出どころによっては共有財産ではなく特有財産になります)。
一方、別居後に新たに貯めた預金や購入した財産は、通常は共有財産ではなく、財産分与の対象とはなりません。
2 財産の評価基準時は「分与時」が原則
対象となる財産が決まったら、次に問題となるのが、その財産をいくらと評価するかです。
実務では、財産を現実に分ける時点(分与時)の基準に評価するのが原則です。
具体的には、
調停であれば調停成立時
審判であれば審判時
訴訟であれば口頭弁論終結時
などが評価基準時となります。
例えば、別居時に保有していた株式がその後値上がりした場合には、原則として値上がり後の価格で評価します。逆に、市場の変動により値下がりした場合も、原則として値下がり後の価格で評価することになります。
3 原則どおりに処理できないケースもある
もっとも、この原則がそのまま適用できない事案もあります。
例えば、別居時には1000万円相当の株式を保有していたものの、その後売却し、売却代金も使ってしまったというケースです。
この場合、「別居時には存在したから1000万円として扱う」のか、「現在は何も残っていないので対象外とする」のかという問題が生じます。
価値評価の基準時は分与時であるという原則からすると後者になりますが、そのように考えると不公平な結論になる場合があります(財産分与を免れるために売却して、代金をわざと浪費したような場合)。
実務では、このような場合に財産がなくなった経緯を重視しています。
① 財産の減少が、通常の資産管理や生活費等への支出による場合
別居後に財産が減少した理由が、
生活費
医療費
税金の支払い
通常の資産管理
などであれば、現存しない財産は「価値ゼロ」として考えることになることが多いです。
例えば、株式を保有し続けていた結果、市場全体の下落により価値が減少したのであれば、財産を浪費したわけではありません。
このような場合は、原則どおり、分与時の時価を基準に評価することになります。
② 財産の減少が、財産隠しや不当な処分の場合
これに対し、財産分与を免れるために財産を隠したり、不当に処分したりしたような事情がある場合は別です。
例えば、
財産分与を免れる目的で株式を売却した
知人へ著しく低い価格で譲渡した
意図的に浪費した
といったケースでは、「現在存在しないから価値ゼロ」と単純に判断されるとは限りません。
裁判所は、財産がなくなった経緯や処分の目的を考慮し、公平な結論となるよう財産分与額を調整することがあります。
4 まとめ
財産分与では、どの財産を対象とするかは、原則として別居時を基準に判断します。
その財産の価値の評価は、原則として財産分与を行う時点(分与時)を基準に判断します。
もっとも、別居後に財産が処分・費消された場合には、この原則だけでは解決できないことも少なくありません。
その処分が通常の生活上の支出なのか、それとも財産分与を免れるための不当な処分なのかによって、結論が変わることがあります。
財産分与では、個々の事情を踏まえた「公平」の観点が重視されるため、事案に応じた具体的な検討が必要になります。
水戸ひなぎく法律事務所では、離婚・相続に関する初回の法律相談は無料でお受けしています。お気軽にお問合せください。
水戸市だけでなく、ひたちなか市、那珂市、鉾田市、笠間市、常陸太田市、常陸大宮市、日立市等にお住まいの方のご相談もお受けします。
----------------------------------------------------------------------
水戸ひなぎく法律事務所
水戸で離婚問題の解決に尽力
----------------------------------------------------------------------